愛シテアゲル
16.純情バカ娘のケジメ。(1)
わ、寝坊した!
昨夜の余韻に浸る暇もなく、小鳥は飛び起きる。
「どうしよう。翔兄のスープラ、どうしよう」
朝方、眠っている彼をそのままにしておきたくて、小鳥はそのままにしてMR2でひとり龍星轟に戻ってしまった。
英児父と話した後、ガレージにエンゼルをしまいに行く時、従業員駐車場にスープラがそのまま残っていることに気がついた。
もどる? お兄ちゃんを起こす? 知らせる? どうしよう――。
なにもかも都合が悪かった。
何故、翔が龍星轟に帰ってきて、相棒とも言えるスープラを取りに帰ってこなかったのか。
何故、小鳥だけ一人で帰ってくるようなことになったのか。
英児父に問いただされたら、小鳥は言葉に詰まるだろう。
翔兄もきっと落ち着いた顔をするだろうけれど、内心では困るだろう。
彼をそっとしておきたかったのに、かえって、彼らしくない行動をさせることに……。
そして、小鳥はここでさらなる確信を持つ。
英児父は、娘が部下の男と長い時間一緒にいて『どのようなことが起きるか』、もう見通している。
だから、聞きたいけれど、やっぱり聞けなかったのではないだろうか。
いつ、どのようにして翔と別れ、何故、大事にしている車を翔は取りに来なかったのか。
それを聞けば、決定的になることを恐れていたのかもしれない?
少し早く起きて、お兄ちゃんを龍星轟に連れてくればいいかな。なんて考えていたら眠ってしまい、しかも寝坊。
急いで支度をする。