愛シテアゲル
やっと英児父から切り出した。
「なんだ。言い返さないのか」
「本当のことですから」
「そんな澄ました顔をして、腹の中ではけっこう計算し尽くしているところ、毎度ムカツクんだよ」
なに、なに? 父ちゃんったら朝から攻撃的! 小鳥は密かに青ざめていた。
これってもしかしてもしかして『俺の娘に手を出した』ことをなんとなく察している父親の腹いせ? あっけらかんとしている父ちゃんは、そんなねちっこいことが嫌いなはず……。なのに?
「ランエボの男のこと、だいたい目星をつけていたのに、確証がないからと俺にははっきりするまで報告はしないと言い切った。だいたいの目星は確かに合っていた。でもよ、やっぱりあそこで『予測でもいいから報告』しておいてもらうべきだったと俺は後悔している。判っていれば、おまえにもあんな危ない対決なんかさせないで済んだかもしれないと」
「……そのことについては。自分も、あの時点でなんでも良いから報告しておけば良かったかもしれないと、思っていました」
今回の反省と、あの時に噛み合わなかった上司と部下が招いた結果を互いに悔いているようだった。
『父親の腹いせではなかった』と小鳥は少しホッとしながらも、まだ落ち着かない。