愛シテアゲル
『お兄ちゃんだから』。甘えていたんだ。当たり前になっていたんだ。恋人になったばかりかもしれないけれど、もう翔とは十年近くここで一緒に歳月を過ごしてきた。年上の大人のお兄ちゃん、そんな甘えは日常になって……。
私、これからもっともっと……。
改めて、彼の隣にいる女としての気持ちを思っている中でも、男達の話は先に進んでいく。
「安心したわ。それぐらいの『裏』が予測できなくては、おまえに店の管理なんて任せられねえからな」
『おめでたい娘』と昨夜言われた小鳥だったが、いまなら父親のあの言葉を素直に受け取れる。本当にその通りだったんだと身に染みる。
「翔、瞳子さんに連絡とれるか」
思わぬ父の言葉に、小鳥はドア越しに静かに目を見開いた。
もう二度と会わないと、はっきり告げて帰らせたのに?
「なぜですか。社長。彼女とはもう二度と会わないと決めています」
思わぬ上司からの指示に、翔も飲み込めない様子。
「おまえとじゃねえよ。俺が会って話したいんだよ」
はあ? 何を言い出すの、この父ちゃんは!?
もうちょっとでこのドアを開けて、男二人の対面に飛び込んでいきそうになったけれど、小鳥は頬の痛みを思い出しなんとか堪えた。