愛シテアゲル
娘の自分が出て行く隙もない。小鳥はそろそろドアから離れようと背を向けた。
「車、取りに来なかったんだな」
また父の気になる一言に、やっと歩き出した小鳥の足が止まる。
やっぱり父ちゃん、我慢できなくて探っているじゃん!
小鳥の心臓が今度こそドキドキ破裂しそうだった。
「スープラより大事なもんでもあったのかね」
翔がどう答えるのか、また父親はどう受け取るのか。また言い合うのか。
もう小鳥は通路の壁に寄りかかって、なんとか崩れそうな身体を支えている。
「そうですね。車より大事なものだってありますよ。俺にも」
車より大事なもの――。それって私のこと?
車しか見えていなくて恋人と別れた人だったのに。
いまだって車が大好きで、小鳥はそんな男性でも全然構わないと思っていた。
でも、やっぱり嬉しい!