愛シテアゲル
必死だった。翔が殴られるところを見たくなかった。そのために、自ら傷ついたことは後悔はしていない。
だけれど『それをしたことで、その後どうなる』は、まったく考えていなかった。
海沿いの国道を走っている間、運転するフロントに浮かぶのは真鍋専務の怒り顔だった。
出勤をして控え室で着替える前に、小鳥は事務所にいるだろう真鍋専務に会いに行く。
「失礼いたします。滝田です」
ドアを開けると、真田美々社長と真鍋専務がいつも通りに控えていた。
アルバイトの小鳥が訪ねてきて、その顔を一目見たお二人の表情が固まった。
「小鳥、どうしたのその顔!」
今日も女っぽいスーツを着こなしている美々社長がデスクから立ち上がる。
「おはようございます。お知らせしたいことがあって参りました」
一礼をして顔を上げると。そこにはもう険しい目線だけを向けている『おじさん』がいた。
もうなにもかも察しているような目だった。英児父からもう聞いているのか、いないのか。
「どうしたその顔は」
まずは専務も小鳥を問いただそうとしている。