愛シテアゲル
「先日お話しした私の車に衝突してきた運転手を、父と従業員とつきとめました」
また美々社長と真鍋専務が顔を見合わせながら、息を止めた顔。
「運転手を捕まえたということなのか」
「はい。勝浦で遭遇して、父の指示でダム湖に追い込んで……それで……」
「まさか。小鳥……、お父さんと一緒にいて、その悪い男に殴られたの? どうしてそんなことになったの! 滝田社長も一緒にいたのでしょう!」
父親が傍にいて娘が危険な目に遭うとは何事か。同じ娘を持つ母親として、美々社長がいきりたった。
真鍋専務はますます冷たい目。だけれどその奥に怒りを潜ませているのが小鳥にはわかった。
「親父さんも手に負えないような無茶をしたんだろう。小鳥らしいじゃないか。そうなんだろう?」
子供の頃から、真鍋兄弟や弟たちに混じって『やんちゃな遊び方』をしていた小鳥の性質をよく知っているおじさん。あの元ヤン親父が防げなかったなら、それしかないと確信している。
小鳥も観念する。
「はい……。その、一緒にいた従業員のひとりが殴られそうになったので、それが嫌で止めに入ったら、その拳が私にあたりました」
「ほらな。火に飛び込むんだよ、この娘は。自業自得だ」
デスクにバンと手をついて、真鍋専務が立ち上がる。
バンと机を打つ音は、昨夜、英児父にも聞かされただけに小鳥はそれだけで何とも言えない恐怖を覚えた。