愛シテアゲル
「真鍋君、そんな、まだ小鳥は大学生でアルバイトじゃない。謹慎だなんて社員じゃあるまいし、事務所で手伝って欲しいことだって沢山あるわよ」
そんな上司である美々社長にも、真鍋専務は恐れずに険しい眼を向けた。
「滝田は事務仕事で雇ったつもりはありません。たかがアルバイトでしょうが、それでも店に出れば客に接する立派なスタッフです。甘やかすつもりはありません。きっと滝田社長もそう思っていることでしょう。私にはわかりますよ。あの親父さんの真っ直ぐさを、昔から知っていますから。美々社長も、あの元ヤン社長のこと良く知っているでしょう。本当は『今日は迷惑がかかるから行くな』と言いたかったことでしょうね、父親として。でも娘の仕事は範囲外だと口出しせずに、そのまま彼が私のところに届けてくれたんだと直ぐに判りましたよ。彼女はもう成人しました。社会でのことは社会の先輩に預けるという父親の心積もり。彼から預かっている以上、なおさら甘やかすつもりはありません」
さらに手厳しい専務の意見に、美々社長も納得したのか『わかった。専務の言うとおりよ』とその後は何も言わなくなってしまった。
「もういいぞ。滝田」
すぐに出て行けと言っているような怖い眼差しに気圧され、小鳥は一礼だけして事務所を後にした。