愛シテアゲル
翔がゆっくりと頬をほころばせると、小鳥は隣の椅子にいる彼に引っ張られ、胸元に強く抱きしめられていた。
「小鳥はやっぱり小鳥だな。来年も一緒にいような」
『うん』と彼の腕の中、嬉しくて顔を上げると、ふっと柔らかいものが小鳥の唇の端に。
唇の端に、熱くて柔らかい感触。でも熱く濡れる感触も。
すぐに中を侵さない、優しいキス。なのに翔は唇の端でも、そこを静かにゆっくりと吸った。激しくはないけど、じっくりとしたその愛撫に小鳥もつい吐息を漏らしてしまう。
「しょ、しょう……にい」
前触れもなく、いきなり。心の準備がまだ……。ううん、どんな心の準備だって今夜は役に立たない。翔兄が触れただけで、きっと小鳥のなにもかもが大慌てで大騒ぎにしかならない。
五日前、初めて知った大人のキス。味も感触も、やり方も。もう体験済みだから、どうキスを交わせばいいかわかっているはずなのに。小鳥はなにも出来ず、今夜も彼にされるまま。
そして翔も。五日前はあんなに激しく小鳥の中に入ってきたのに、今日は唇の端だけを吸って、舌先でなぞるだけ。
でも、それだけでも、小鳥の身体に甘い痺れが駆けめぐって、もう気が遠くなりそうだった。
「あの印、まだ残っているのか」
彼のキスが耳元に移る。抑えた声の囁きが熱く、耳たぶを震わせる。そのくすぐったさに、とろけてしまいそうになりながら、『うん』となんとか頷いた。
「まだ、あるよ。だいぶ薄くなっちゃったけど……」
そう答えると、翔の手が小鳥のシャツの下へとくぐっていく。