愛シテアゲル
「真田のアルバイト。謹慎になったんだってな」
「……なんで、知っているの」
「閉店前に、真鍋専務から親父さんのところに連絡が来たんだよ。だけど親父さんは『そうなると思っていた』と言っていた。今朝から判っていて、小鳥を送り出したみたいだった」
涼おじさんが言っていたとおりだった。『滝田社長もわかっていて、何も言わず小鳥を送り出し、俺に預けてくれた。だから甘やかさない』と言っていたとおりだった。
小鳥はむっくりと起きあがる。ベッドの縁に座ると、翔もその隣に静かに座り寄り添ってくれる。
「真鍋のおじさんも、そう言っていた。滝田社長は判っていて、娘に何も言わずに、真田珈琲に委ねてくれたんだって……」
「うちの社長と真鍋専務はそんなところ良く通じているな。父親同士だからかな。……そうだな。俺から『小鳥は悪くない。俺を助けてくれたんだ』と説明をしに行きたい。だけれどな、俺も客商売をしているから、真鍋専務の言いたいこと解るんだ。そう思うと、やはり小鳥には申し訳なさでいっぱいだ」
「ううん。私……。これで良かったと思っている。いままで本当に、自分が思ったことを貫くことばかり考えて、後先考えずに飛び出していたけれど。それをすることで『後にどのようなことが起きるか』なんて考えたことがなかった。そうしなさいと言われても、そうする必要もないと甘えていたの、きっと。それがどういうことか、ほんとうに良くわかったもん……。だからいいの」
それでも翔に話している内に、また涙が溢れてきた。
だけれど、ここなら泣いてもいいとも思って小鳥は我慢はしなかった。