愛シテアゲル
「家に帰って泣くと……、弟たちも気にするし、お母さんも心配するから」
隣で翔が小さなため息をついて、でも柔らかに微笑みながら小鳥の頭を撫でてくれた。
「そうして今まで『我慢強い、しっかり者の元気な娘』を頑張ってきたんだろ。いつもは部屋で泣いていたのか。それとも車を飛ばしていたのか」
小鳥がどんな娘かよく知ってくれていて……。そして『いつもは元気な女の子だけれど、泣きたい時に泣けないんだろう』と、親にも弟にも見せたくないその弱さを翔は見抜いてくれている。
「翔兄……。ここにいさせて」
隣にいる彼の胸に抱きついた。……もう彼はびっくりして身体を硬くすることはない。昨夜、結ばれた身体同士だから、深く静かに抱き留めてくれる。
小鳥も悲しくて落ちていく中、優しい羽毛に包まれたよう。
もう彼の腕は、私のもの。抱きついたら優しく吸い込むように抱きしめてくれるようになった。もう他人行儀に身体を硬くすることはない。それだけで小鳥は安心もするし、気持ちが落ち着く。
「なにかうまい物でも食べに行こうか」
「ううん。ここにいたい。どこにも行きたくない。今夜は走りたくもない」
『そうか』と彼がまた頭を撫でてくれる。
「晩飯、買ってくる。待っていろよ」
ベッドルームに小鳥を置いて、翔はまたスープラのキーを片手に出かけていった。