愛シテアゲル


「お兄ちゃん?」

「お兄ちゃん『違うこと』をゆっくり教えたくなりそうになったりして。試験の邪魔にならないよう、大人のお兄ちゃんの方が我慢するから安心しろよ」

 何を我慢すると言いだしたのか直ぐにわかった小鳥はつい赤くなる。

「もう、翔兄がそんなこと言うなんてヤダっ」
「もうお兄ちゃんではないからな。小鳥も気をつけろよ。昨夜、あれだけの、なあ……」

 またそういう恥ずかしいところは濁すんだと、小鳥は呆れた。

「あれだけのってなに」
「聞きたいのか」

 困る翔兄をみてやろうと思って意地悪を言ったのに、逆に『本当に恥ずかしいこと言うぞ』といわんばかりの真顔で返されてしまう。

「やっぱ、いいです」

 最後は大人のお兄ちゃんには敵わないだろうという勝ち誇った笑みをみせつけられて、なんだか悔しい。

 でも翔が笑いながら言った。

「それだけ、良かったってことです」
「良かったの……?」

 本当は小鳥もそこは気にしていた。大人の女としては程遠い小鳥のこと、経験ある大人のお兄ちゃんは満足してくれたのだろうかと――。


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