愛シテアゲル


「あんなに強く吸ったから、痛かっただろう。でも、今日まで残しておきたくて」

 彼の予約の痕。他の男が見てしまうなんてことはないけれど、それは歳が離れている小鳥を自由にさせてくれる余裕とはうらはらの、彼なりの心配が顕れている痕。

 それを確かめたくて、安心したくて、彼の手が急いでいる。忙しく小鳥のデニムパンツからタンクトップの裾を引っ張り出す。丁寧で慎重な翔兄らしくない乱し方……だった。

 そんなに心配しなくても……。確かに同世代の男子といることは多いけど、お兄ちゃんが一番なのに。そう伝えたい。

「痛かったよ。でも、嬉しかった。ハジメテのキスマーク。どんな時もすぐ傍に翔兄がいてくれるみたいで……」

 ――小鳥。

 ずっとずっと前から好きだった笑顔を見せてくれる。そしてついに、小鳥の肌に男の熱い手が触れる。

 彼が探しているもの。彼が欲しいもの。そのなにもかもを解っていて、小鳥は覚悟を決める。

 その時、ハジメテ。身体の奥でつきんとした狂おしい痛みを感じた。下腹の奥で熱く。何かが滲み出てくるような、切ない痛み。

 岬の夜よりずっと強く感じた。これが女になるサインなんだと、小鳥は翔の肩先に頬を押しつけて、今度は自分から彼の背にしがみつく。

「おいで」

 隣の椅子に座っていた翔が、小鳥の手を引いて立ち上がる。

 その手を引かれて、連れて行かれたのは。あのベッドルーム。




※早速、本棚inしてくださった皆様。ありがとうございます♪
 次回は、3.怖いのは俺もいっしょだよ。 です。
 いよいよ、ハジメテの――!?
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