愛シテアゲル
「ああ、うん。そうか、わかった。社長に言っておく」
会話は短く、翔はそれだけで電話を切ってしまった。
黙って待っていた小鳥を見た翔が、いつもの八重歯の微笑みを見せる。
「大学のサークル仲間だよ。長嶋という男。そうだ、今度、長嶋にも小鳥を紹介しなくちゃな。あいつには、社長のお嬢さんが成人になるのを待っているなんて……話していたから」
「えー! それってお兄ちゃんの親友ってこと?」
「そうなるのかな。あっちは生粋の映画オタクだよ。だけれど気が合うんだよな。夢中になっているものは違うけれど、マニア的精神が似ているというか。あいつ部長で、サークルの同窓会をするときもリーダーなんだ」
「映画マニアの部長さん。会ってみたい!」
そうなんだと小鳥は笑ったけれど、今朝の事務所で英児父が翔と話したことを忘れてはいない。
きっとその長嶋さんが、翔兄に頼まれて瞳子さんに連絡ができるようにしたのだと。
瞳子さんは英児父に呼び出され、それに応じてくれるのだろうか?
「ところで、小鳥。スープラのキーホルダーにつけていた俺の指輪。どうしたんだ。小鳥が取っていったんだろ」
今朝。彼を置いて部屋を出て行く時、彼のリングを小鳥は持って帰っていた。
「しばらくの間、貸して」
「どうして」
「お願い。貸して。ちゃんと返すから」
翔は訝しそうにしていたが、小鳥には考えがあった。
今日、それをしたかったのにできなかったから。また後日。
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