愛シテアゲル
やんちゃ娘と淑女。(2)
三日以内に来い。
英児父が、瀬戸田という男に突きつけた最終通告だった。
その三日目に、龍星轟の英児父宛に、向こうの弁護士から連絡があったということだった。
「小鳥、暇なら洗車とワックスがけを手伝ってくれねえか」
あれから最初の週末のことだった。いつもならアルバイトに出ているのに、謹慎中で小鳥は自宅で暇を持て余していた。
そんな時、仕事中の英児父が二階の自宅まであがってきて、部屋で本を読んでいる小鳥に声をかけてくれる。
「いいの? 龍星轟だって客商売だよ。こんな顔を見せたら……」
腫れは引いたが、口元にほんのりと青黒い痣が小さく残っていた。これは数日経ってから出てきたもので、腫れが引いて顔立ちが戻っても割と目立つものだった。
「いいんだよ。おまえがどうしたかなんてもう知れ渡っているだろうよ。父ちゃん、これから外回りで忙しいんだわ。頼むな」
小鳥が『でも』を言い返す前に、英児父は部屋のドアを閉めた。
ひさしぶりの強引な父親に唖然としたが、小鳥は重い腰を上げクローゼットを開ける。
車に乗るようになってから父親がプレゼントしてくれた『龍星轟のジャケット』を羽織った。