愛シテアゲル


 黒のランサーエボリューション。小鳥も知っている兄貴の車。

「高橋兄ちゃんのランエボも直ったね」

 黒い車のボディ左右に分かれ、互いにまずはルーフからワックスがけをする。

「ああ、よかったよ。こちらはランエボ同士でムキになって峠走行の勝負をして、瀬戸田の幅寄せを避けようとして自損だったけどな。それでも小鳥のMR2より当たりも酷かったし、部品の取り寄せもあって時間かかった」

「高橋兄ちゃんにも怪我がなくて良かったよ。でも、高橋のお父さんと一緒にすごい怒っているんだってね。同じランエボ乗りなのに、卑怯な走りをするって……。ランエボ乗りとして許せないって言っていたもんね」

「赤ランエボの高橋さん、ランエボ父ちゃんも息子が巻き込まれたことを心配していたから、社長も瀬戸田のことは報告したみたいだ」

 『そうなんだ』。それでも白のランエボXに当てられて、龍星轟に運ばれてくる車はもうない。

 龍星轟開店当初からの常連客である、赤いランサーエボリューションに乗り続けてきた『高橋のおじさん』。息子さんも免許を取ってから、黒いランサーエボリューション乗り。『ランエボ親子』と言われている。親父さんは英児父と一緒によく走り、息子は翔や小鳥と一緒に走ることが多い顔見知りだった。



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