愛シテアゲル
「翔兄。大丈夫だよ。お店のみんな、おじさん達もマコちゃんもノブ君も、ダム湖の仲間だって翔兄が悪いだなんて思っていないよ」
翔が無言でルーフのワックスを塗り始める。
どんなに言っても、自分の人間関係のせいだと責任を感じるのは『本人だけの気持ち』だと言いたいのだろう。それでも小鳥は諦めずに、翔に告げた。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんがみんなのこと信じているように、お兄ちゃんもみんなのこと、信じてあげてよ。お兄ちゃんがみんなを好きな分だけ、きっとみんなも翔兄が好きだよ。ダム湖で一番の兄貴は翔兄じゃない。翔兄がいて、みんな、安心して走ってきたんだよ」
綺麗ごと過ぎるとわかっている。英児父なら『純情バカ娘』と言うのだろう。でも、小鳥はこのお店を通じて親しくなってきた人達だけには、そういいたい。信じていきたい。大好きな人達ばかりだから。
翔の、ワックスを塗る手がまた止まった。その手に気がついて、ボディの向こう側にいる翔を見ると、あのクールな眼差しで睨まれていた。
「ご、ごめんなさい。私がいうこと、子供っぽいね」
「いや。ここが職場で困っているだけ。ありがとうな、小鳥」
あれ? え? 怒っていたんじゃないの? 感じた表情と言ってくれたことが真逆で、小鳥は呆然とする。