愛シテアゲル


「でも。俺はそんな小鳥に何度も助けられてきたよ。だけど、それが俺だけじゃないのが、時々心配だな。お兄ちゃんとしては」

 なんだか、すごく疲れたようなため息をつかれてしまうが、クールな目元はもう優しく緩んでいた。

「頼むから。他の男にも優しくして、無意識に執着されないように」

「また~、そんなこと言って。翔兄って心配性だよね」

「小鳥が心配ばかりさせるからだろ。親父さんが心配してきた分、これからは俺も同じように心配するんだ。これからずっと」

 まるで『これからは俺が親父さん同様の男として、ずっと小鳥の心配をする』、『親同然の男』と言っているようで、小鳥はびっくりしてしまう。

 つまり。それって……。父ちゃんの代わりになる男になるって誓ってくれているの? 
 そんな小鳥の顔を見て、今度は翔がきょとんとしていた。

「どうかしたのか」

「お兄ちゃんだって無意識だよねっ。十歳も年下だから何を言っても気がつかないだろうと思って、からかったらいけなんだよっ」

「はあ? なんのことだよ」

 『もう知らない』、『だからなんだよ』と言い合いながらワックスがけをしていると『そこ、仕事中に仲良くするな!』と留守番監督中の矢野じいに事務所から怒鳴られてしまった。



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