愛シテアゲル


「心配すんな。そこは大丈夫だったみたいだ。隙は見せて、慰めてはもらったみたいだが。最後の最後、拒否をしたんだと。そりゃ、つきまとわれるわ。瞳子さんも失敗したと思ったらしいよ」

 そこで、従業員の事務デスクで素っ気ないふりで聞き耳を立てていた眼鏡の専務が割って入ってくる。

「やっぱりね。俺とタキさんが思ったとおりだったじゃん。下手に相手して、ストーカー化したってこと?」

「ああ。それで旦那には相談する訳にもいかないだろ。大学時代にフッた男の相手をしてつきまとわれているだなんて。しかも旦那も親も留守になった。赤ん坊と二人。恐ろしくなって、心も追いつめられて、それで翔のところに二年ぶりに駆け込んでしまったってわけだ」

 小鳥が事務所ドア裏で、こっそりと聞いてしまった英児父の予測通りだった。

「じゃあ、翔兄のせいじゃないんだね」

 これでお兄ちゃんの存在が、あいつを壊しただけではないと解り、小鳥も笑顔になりそうになった。だが隣の彼が肩を落とし神妙なままだった。とても喜べる気分ではないよう……。



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