愛シテアゲル


 数分後、矢野じいだけが帰ってきた。英児父はどうしたのかと思ったら、そのまま黒のスカイラインでまた出かけてしまったので、小鳥はギョッとしてしまう。

 戻ってきた矢野じいが『ガキか。まったく、どうしようもねえ』と吐き捨てながら、スカイラインを見送ってしまった。

「まあ。わからんでもないわ。娘が年頃になったら、イライラするもんなんよ。しかし、小鳥。よう言い返したわ」

 矢野じいは褒めてくれたけれど、武智専務は苦笑い。

「よく言うよ。矢野じいだって、娘さんが男連れてきたら荒れたんでしょ。一発殴ったんじゃないの。絶対、拳が先に出ているよね。可哀想なお婿さん」

「うっせい、うるせい、うるさいわいっ」
 顔を真っ赤にして矢野じいがムキになっているので、小鳥は『嘘じゃなさそう』と頬を引きつらせる。


< 311 / 382 >

この作品をシェア

pagetop