愛シテアゲル
数分後、矢野じいだけが帰ってきた。英児父はどうしたのかと思ったら、そのまま黒のスカイラインでまた出かけてしまったので、小鳥はギョッとしてしまう。
戻ってきた矢野じいが『ガキか。まったく、どうしようもねえ』と吐き捨てながら、スカイラインを見送ってしまった。
「まあ。わからんでもないわ。娘が年頃になったら、イライラするもんなんよ。しかし、小鳥。よう言い返したわ」
矢野じいは褒めてくれたけれど、武智専務は苦笑い。
「よく言うよ。矢野じいだって、娘さんが男連れてきたら荒れたんでしょ。一発殴ったんじゃないの。絶対、拳が先に出ているよね。可哀想なお婿さん」
「うっせい、うるせい、うるさいわいっ」
顔を真っ赤にして矢野じいがムキになっているので、小鳥は『嘘じゃなさそう』と頬を引きつらせる。