愛シテアゲル


 他人事じゃない。本当の父子の如く性質が似ている師弟だけあって、英児父ももしかすると、もしかすると?

 いまはスカイラインですっ飛んで済むかもしれないけれど、やがて翔を見て、矢野じいみたいになってしまわないかと小鳥は震えた。

 その反面。『どこのお父ちゃんも一緒だね。仕方ないか』と、妙な諦めのようなものも湧いてきた。翔はどう思っているのだろう。

「港の海岸を一走りしたら帰ってくるわい。頭を冷やしているんだろ。ここは父ちゃんじゃなくて、社長でなくてはならないからな」

 師匠である矢野じいは、いまや立派な社長で経営者になった弟子には余程のことがない限り口出しもしなくなった。すっかり好々爺になったと思ったけれど、いざというとき、英児父を諫める役目はまだ降りていないようだった。

 

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