愛シテアゲル


 恋人になってもわからない。その目、なに? 怒っているのか、呆れているのか、困っているのか。良く解らない大人の目。

「一緒に来ないか」

 目を丸くして、小鳥は彼を見上げた。

「え? あの、えっと私、邪魔……」
「言い方が悪かった。一緒に行こう」

 今度は小鳥が言葉を失い、ただ彼を見上げるだけに。翔は小鳥と一緒に行きたいと申し出ているのだ。

「と、瞳子さんは、嫌なんじゃないかな」
「いや。連れてきてもかまわないと言ってくれている。彼女も小鳥に会いたいと言っている」

 衝撃を受けた。別れた彼を取り戻したいと思っている彼女が、いまの恋人である小鳥と翔を目の前にして話したい?

 それって。それって。もしかして『彼を返して』とかいう挑戦状?

 噂でよく聞く『修羅場』というところに連れて行かれるのだろうかと、小鳥は冷たい夜空の下で戦慄いた。



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