愛シテアゲル


 もしかすると、翔兄から見れば、いつもの小鳥に見えるかもしれない。『何事も思い切っている女の子』である小鳥を見て、らしい――と思ってくれたのか急におかしそうに笑ってくれる。

 そんな彼を見て、小鳥はちょっと憎らしくもなる。思いきりは『小鳥らしい』かもしれないけれど、本当は、本当は、すごくスゴク凄く恥ずかしいのだって、わかってくれていないと密かにむくれる。

 笑った彼も、遅れてネルシャツを脱ぎ捨てた。こちらも思いきりがついたのか、男らしく荒っぽい脱ぎ方。

 タンクトップ一枚とショーツだけになった小鳥と、ボクサーパンツだけになった素肌の翔兄が向かい合う。
 ……初めて、見た。彼の、素肌、裸?
 思いきって服を脱いだはずの小鳥だったが、思わぬ男性の出現に、固まってしまった。

 やっぱり。この人は父親と同じ仕事をしている人だと思った。

 程よい胸筋に、割れるまではいっていないけれど引き締まった腹筋。そして筋肉がついているとわかる程度の逞しい腕。艶やかな肌がうっすらと汗を滲ませているのがわかり、彼の身体も火照っているとわかる。

 しかも――。汗の匂いが、小鳥がよく知っている男性の匂い。それを彼から強烈に感じている。

 男――。これが男だと、小鳥はもう知っていた。この匂いを強烈にはなっている男に育てられたから、この匂いにはいつも敏感だった。それがいま小鳥を急激に襲う。

 目眩がする。甘い部屋の匂いと、男の匂いが、小鳥の中にある硬くなっていたものをほどいていく……。



< 32 / 382 >

この作品をシェア

pagetop