愛シテアゲル


 だが翔はため息をつくと、ちゃんと小鳥に告げた。

「仕事帰りによく待ち合わせていたんだ。道後らしい落ち着いた和カフェで、俺の仕事が遅くなっても、そこなら瞳子は歩いて帰ることが出来るから」

「和カフェなんだ。知らなかった、こんなところに」

 元恋人との待ち合わせ場所だったことよりも、小鳥はつい仕事絡みになる『カフェ』に反応してしまった。

 それを見た翔がちょっと呆れた顔をしたような……? 少ししてから彼がおかしそうに口元を緩めていた。

「なんだよ、そっちかよ」

「あ、うん……。だって。お兄ちゃんと瞳子さんが恋人同士だった時のことなんて、何も言いようがないじゃない。その時、私、子供だったんだし」

 いまでも子供かも――と、心で付け加えてしまう。

「子供だった、もう大人だったも関係ないな。その時わからなかったことが、別れてから沢山わかった。もしくは、小鳥と一緒にいるようになってわかったことも沢山ある」

 それって。良いことなの、嫌だったことなの。ふとそう思ったが小鳥は口にしたくなかった。



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