愛シテアゲル
やっぱりそんな責めるお兄ちゃんなんてみたくないよ。だけど小鳥もちょっとずつ解ってきた。
このお兄さんは英児父のようにドンといっきに感覚を得る男ではないのだと。
慎重で堅実だからこそ、じっくりゆっくり噛みしめるように味を確かめて取り込んでいくタイプの人なんだと。
だけど、それを取り込んだら『一途』。この人もぶれない。そんな男の人だと近頃は感じている。
感覚のスピードは違うけれど、根本的な価値観が彼とはとてもよく似ていたのかもしれないと。
「瞳子のこと、すごく傷つけていたと思うよ。小鳥はあの時の俺を見守ってくれていたから、俺としてもこのケジメは見届けて欲しいというか……」
だから『一緒に来て欲しい』と言ったのかと、小鳥もようやっと納得した。
「うん。わかった。黙ってみてられるよ。いつものように思わず首を突っ込むとかしないから」
「あはは。別に、小鳥が俺と瞳子の話し合いを滅茶苦茶にするだなんて思っていない。でも……瀬戸田とのことは、俺と瞳子は龍星轟にも小鳥にも申し訳ないことをしたと思っているんだ」
瞳子がそれをいちばん気に病んでいる。彼女にも詫びるチャンスをくれないか。最後に翔はそう言った。
「着いた。あのカフェだ」
和カフェで、あまりにも町並みに溶け込んでいて今まで小鳥も気がつかなかった小さなカフェだった。
温泉街の周辺町、そこが翔と瞳子さんが育った周辺。実家が近いことも二人を仲良くさせたのかなと思うぐらいに、二人の実家が近かった。
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