愛シテアゲル
「彼を拒絶してからしばらく連絡がなくて安心していたんだけど。翔の部屋に二年ぶりに訪ねる前の晩に、瀬戸田君からメールがあったの。『いい加減な瞳子さんは、きっと痛い目に遭う』と。だからって出てこいとも会ってくれともなくてそれっきり。でも怖かった。また公園に来ているかもしれない、家を知られているかもしれない。でも夫も実家も留守で、怖くなって次の朝早くに外に出たの。なるべく人が多い市駅のデパートで時間を潰していたんだけれど、夜になってこれから閉店の時間になったらどうしたらいいんだろうって――。それで、つい、翔のところに……」
「そうだったのか。あの晩だ。小鳥がMR2をぶつけられたのは」
「聞いたわ。痛い目に遭うって……。瀬戸田君も、その夜はダム湖にいるだろう翔を探して、最初から体当たりする決意だったのね。だけど、昔の翔の車には女の子が乗っていた……」
「だから、気がついた瀬戸田は一発だけ当てて去っていったのか」
なにもかもが結びついていく。小鳥が知らない『お兄ちゃんとお姉さんの学生時代』の世界。小鳥はそこにいつのまにか紛れ込んでいたらしい。