愛シテアゲル
そんな彼女が小鳥を見た。そして深々と頭を下げてくれる。
「ご迷惑をおかけいたしました。ほんとうに、ごめんなさい」
別に。彼女に謝って欲しいことなどなにもなかったのに……。
「私が謝って欲しいのは、瞳子さんよりも瀬戸田という男の人です。許せないんです。私たちが好きな車を使って、私たちの愛車を次々と潰そうと思い付いたその心根がいちばん許せない。その前に、男と女のいざこざがあってなんてことは、関係ないんです。それがあって、むしゃくしゃして、じゃあどうして『車を痛めつければ、いちばん悔しい思いをする』なんてことが思い付くのか出来るのか。それが許せないんです」
自分より大人の二人が顔を見合わせた。
そしてその隣で翔がやや呆れた面持ちで首を振っている。
「小鳥らしいな、ほんとうにもう」
だけどどうしてか、翔と瞳子さんがそこで目を合わせて笑いあっている。
「翔が言ったとおり。根っから車屋さんの娘さんね」
「それに合わせて、最近は珈琲や喫茶に夢中だ」
やっとカップを手にして彼が珈琲を飲んだ。