愛シテアゲル
「滝田社長、お父さんから聞いたわよ。いま、真田珈琲の本店でアルバイトをしていらっしゃるんですってね。将来は、長浜の親しいおじい様のお店を継ぐんだとか」
「そんなことまで話したんですか。あの父は……」
翔のために、本当の経緯を聞きにいったはずの父が、指定した場所で娘の話をしちゃっている。
「そのお顔になった為に、謹慎になったんですってね。珈琲を持ってきてくださったのが、真田の専務さんだったかしら。お父さんとお二人で挨拶を交わしていらして、その時に、お父さんが『バカ娘は元気だから心配しなくていいよ』と専務さんに……。専務さんホッとした顔していらしたわよ」
おじさんが本当は気にしてくれていたことを小鳥も知ってしまう。そして英児父が本店に行ったのはそれもあったのかもしれない。
「その時に、なにもなければ今日もあのお店で働いているはずの貴女が、どうして今はいないのかお父さんからお聞きしたの」
そして、この彼女にどんなことが起きたのかわかってもらうためにも、本店に連れて行ったのかもしれない……。父がすることを娘としてそう感じてしまう。
「それで……、あの男を突き放してなんとか逃れたと思ってのうのうとしていた自分を恥じました。あの男が接触してこなくなったから諦めてくれたんだとほっとしているその間、龍星轟のお客さんに迷惑がかかっていて、貴女の車がぶつけられて……。自分の気持ちを楽にするために安易に彼に気を許してしまったことが、こんなことを起こしていると滝田社長から聞いて、頭が真っ白になった……」