愛シテアゲル
そして彼女はその時、英児父と何を話したのかを教えてくれる。
英児父は『瀬戸田という男と最近会ったりしていなかったか』とまず切り出しそうだが……。
「正直言って、彼に少しでもなびいてしまったことを知られたくないと思ったのよ。そんな軽い女だなんて、特にあの社長さんには知られたくなかった。だけど社長さんは『いきなり翔が恨まれたのが腑に落ちない、何年も会ってもいなかったのにいきなり』、自分は部下にはなんの落ち度もないと思っていると――」
上司である自分はそうは思わない、どうしてこのようなことが急に翔に降りかかったのか知りたいと、英児父は瞳子さんに強く尋ねたとのことだった。
「ただの男と女のいざこざに、どうして上司であるあの社長さんが首を突っ込んでくるのか嫌に思った。でも瀬戸田君がそちらのお店に迷惑をかけていることを教えてくれて……。そちらのお客さんに被害が出て、娘の車がぶつけられて……。そんな犯罪まがいのことに走っていたことを知った時は血の気が引いた」
彼女がそこで心苦しそうに眼差しを伏せた。
「そんな彼を追いつめていたんだと、私のせいだと、やっと自覚したの。実際に瀬戸田君にも酷いことを言ったから」