愛シテアゲル


 小鳥はチョーカーの留め具を外すと、目の前で戸惑っている翔の首にそれを付けようとする。

「翔兄。まだまだお兄ちゃんに追いつけない、十年も後を歩いている私だけど……」

 彼の首の後ろで、小鳥はパチンと留める。
 男っぽい鎖骨のところで、初めて銀色のリングとカモメが揺れた。

「翔兄。約束なんかしなくても。これから毎日、ずっと十年。それからももっともっと。私、翔兄を愛シテアゲル」

 一緒に暮らすとか、結婚とか、いまはまだわからない。だけれど、今から彼に精一杯できることは、彼をめいっぱい愛していくこと。それを続けていくこと――。

 それを誓うように、小鳥から彼の唇にチュッと小さなくちづけをした。

 ボンネットに座っている翔は上から女の子にキスをされて、呆然とした顔。そっとキスした跡に触れて、ため息を落としている。

「小鳥、あのな」

 ふと気がつくと、またあの怒ったような顔で下から睨まれていた。

 え、どうして? やっぱりまた子供っぽかった? 大人は確実性のあるライフプランを目安にパートナーと生きていこうとしているのに、小鳥はただただ不確かな気持を口にするだけだから?



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