愛シテアゲル


 意地悪なお兄さんは、あどけないヒナを制しても、力任せに女を貫いたりしない。
 意地悪だから、じっくり様子を窺って、逆に小鳥に欲しいと言わせようとしている。
 経験のないヒナに『もどかしい、欲しい』という気持ちを覚えさせているようで、『意地悪』と泣いてばかりいると、やっと優しくゆっくり愛して。小鳥がどんな反応をするのか上から眺めている。


 大人の愛し方になすすべもなく、いつものやんちゃ娘も大人しく従うだけ。


「もうダメだよ……翔にい……」
「俺もダメだ、もう優しくなんかなれない」
「も、もう、ひどいよ、翔にい……私、まだ……」

 まだ二度目なのに。なのにどうしてこんな淫らにされちゃうの?
 淫らな女にしてくれちゃうの? ひどいよ……。

 そう息だけの声で吐きながら、でも、シーツの上で何回も彼と愛しあってきたように奔放に乱れていた。

 感じるまま淫らになってしまえばいい。
 おりこうさんな意識はぼんやりと霞んで、あくどい女のようにして、小鳥も翔の肌に愛撫を繰り返した。

「翔、いっぱい愛シテアゲルからね」
「カラダも生意気だ。俺をこんなに……して……」

 セックスなんて二の次だったのに。彼が致し方なさそうに呟いた。

 もう戻れない。車だけの生活には戻れない。
 熱くほてった女の身体を傍に眠るのは、愛車に乗っているように心地よい。
 だから、早く一緒に眠れるように、俺のところにおいで――と。

 

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