愛シテアゲル
ああ、なんか泣きたい。涙がでちゃう。なんだろう、そこを愛されるとなんで泣きたくなるのかな? その通りに、小鳥は泣くような声を堪えていたし、目頭が熱くなってとろけそうだった。
お兄ちゃん。そんなふうになっちゃうんだ……。
これまで憧れて遠くからみつめていた時は、本当に品行方正な優しい王子様だと感じていたと思う。勿論、小鳥が女として成長していく内に、『実際はそうではない部分もあるだろう』とは予測していた。いまが、それ。
男になっている。五日前、彼と両思いだって確かめ合ったあの岬の出来事のように。あの時、小鳥の乳房を露わにして、厭わず、男の顔で愛撫した彼の口先に舌先の熱さとか、粘りとか、湿り気とか、甘い痺れに狂おしい痛み。あれが蘇ってくる。
小さく喘ぐ小鳥を見下ろしながら、翔はそっとゆっくりと小鳥の腕へと着ていたものを抜いてベッドの下に放ってしまった。
「怖くないのか」
落ち着いている小鳥を下に、見下ろしている翔兄が心配そうに見つめてくれている。
「怖くないよ……。ドキドキしているけど、気にしないで」
その言葉にも安心してくれたのか、女の身体に慣れているふうの手先が、ショーツも優しく脱がしてしまった。