愛シテアゲル
私が、愛シテアゲル。(3)
春うらら。桜も散って、もう葉桜。瀬戸内はそろそろ初夏の気配。
今日の晩ご飯は、鳥五目炊き込みご飯と、サワラの塩焼きと、たらの芽の天ぷら。
エプロンをしている小鳥はキッチンで夕食の支度をしている。
あれから、龍星轟に瀬戸田の代理人として弁護士が来た。
英児父と被害者筆頭のランエボの高橋お父さんと、龍星轟の弁護士を交えて話し合いがもたれた。
当然、あちらの弁護士は瀬戸田を擁護するため『示談』を申し入れてきた。
だが英児父が譲らなかった。『本来なら、当て逃げの罪を問われるんですよ』と。しかもうっかり過失ではなく、狙いを定め計画していた悪質な行為。その動機も身勝手で、人のせいばかりにする自己的なものだと。
このまま示談で払えるものだけ払って、はいサヨナラでは納得できない。どうせ、また人のせいにして怒りまくって人を傷つけるに決まっている。謝罪のためのツラも見せねーで、なにをいいやがるんだ――と、さすがの元ヤンの凄味にあちらの弁護士が震え上がっていた。
それが効いたのか。彼直筆の謝罪文を後日、代理人の弁護士が持ってきた。
英児父も高橋のお父さんも呆れていた。
もうあの男はこちらに顔を見せるつもりはないだろうと。