愛シテアゲル
「ただいま」
日が長くなった晩春、彼が帰ってきた。
「おかえり、翔」
「今夜はこっちに来てくれていたんだ」
「うん。今日、スーパーで木の芽が売っていたんだ。翔兄と一緒に食べたいなと思って」
その季節にしかでない旬のものを見ると、『彼と食べたいな』とつい思ってしまう。そうして彼と季節をひとつずつ刻んで、一緒にあれをあの時食べたねとずっと思い出していきたいから。
もう出来上がっている天ぷらを見て、彼が感激の微笑みを、あの八重歯の微笑みをみせてくれる。
「うまそうだな。そうだ、俺も買ってきたんだ」
彼の手にもスーパーの袋。手渡されて覗くと『苺』が入っている。
「わ、高くて諦めたのに。買ってくれたの、翔兄!」
ありがとうと嬉しくて抱きついてしまった。でも彼も笑って強く抱きしめてくれる。
「苺が大好きだもんな。たくさん食べて、もっともっといい匂いの身体になりますように」
「なんか動機が不純ぽくない?」
彼がそこに気がついた小鳥に勝ち誇った笑みを見せている。小鳥はドキリとした。