愛シテアゲル


「赤い小鳥はどうして、赤い……だった」

 子供の頃に唄ったことがある。赤い実を食べたからでしょう――。そう答えようとした時にはもう、小鳥の唇に苺が一粒、押し付けられていた。

「赤い実を食べた、だったよな。小鳥はどうして甘い匂いがするんだろうな」

 そういいながら、苺の先で唇を意味ありげに彼がくすぐる。

「ほら。小鳥。好きだろう」

 今夜も苺の匂いがするカラダを、俺の身体に寄り添わせて。

「ほら。食べろよ」
「……なんか、翔がするとえっち」
「そのつもりだよ。ほら、」

 なにを考えているのかわかっていて。小鳥はそっとその苺の先に舌を這わせてからぱくりと頬張った。

「一度でいいから、小鳥を苺漬けにしてみたいな」
「ベッドが真っ赤になっちゃうよ」

 お兄ちゃんの顔をした王子様が、いまはたっぷりと色っぽい匂いを放つ男になってきた。

 翔は小鳥と愛しあうことを『抜群』という。そんなに興味がなかったのに俺はどうしてしまったんだろう――と、よく呟く。

 夜に彼と肌と肌を合わせることは、もう自然なこと。



< 355 / 382 >

この作品をシェア

pagetop