愛シテアゲル


「この苺、甘いよ。翔」

 苺の香りが残る唇で、彼の唇を小鳥から奪った。
 もう彼は、戸惑ったように硬くはならない。いまの彼はもう、小鳥が触れたそこに熱く溶けてくれる。

「本当だ。いい苺だったな」

 お返しに彼が小鳥の奥まで吸って愛してくれる。小鳥は苺が大好き。いつも苺の匂いがすると――。
 初夏が近づいてきて、彼の服も薄着になる。男っぽい彼の鎖骨に銀のリングとカモメのチョーカーが揺れている。

 キスをする向こうの窓辺には海。そして少し向こうに空港が見える。
 龍星轟の近くに、彼が引っ越した。今度も海が見える部屋。

 新居はリビングと他に二部屋。ベッドルームと、もう一つの部屋は『小鳥のために』と勉強部屋として与えてくれた。

 いまはそこに簡単な机を置いて、クローゼットには少しずつ大好きな服が増えてきて、龍星轟の自宅に置いている愛用品が徐々にこちらに移ってきている。

 なるべく帰るようにしているけれど、たまに不規則に泊まっていくようになった。



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