愛シテアゲル


 それまでにない生活をするようになった娘を見て、英児父が言った。

『お前、正々堂々と生きているって言えるか』

 後ろめたい生き方をしていないか。安易に男に流されていないか。いま、おまえがやるべきことがなにかわかっているか。

 部下と娘の恋仲を見抜いていて、父はわざと小鳥に投げかけてくる。そしてそれは信頼している部下であろうがなかろうが、娘が男を知ってどうなるか案ずる父親の気持ちなのだろう。

 だから小鳥も迷わず答えた。

『後ろめたいコトなんてひとつもしていないよ。胸を張って父ちゃんに言えることしかしていないよ』


 いつか、きっと、父ちゃんにも報告します。
 彼を愛しています――と、報告します。
 卒業するまで、だから、待っていて。
 


 翔と決めていた。大学を卒業したら、結婚前提の同棲を許してもらおうと、決めていた。



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