愛シテアゲル
これって彼の願望? と思ってしまうこともあるけれど、そうでもないよう。
でも父だけが、あまりいい顔をしない。いつものデニムにシャツはどうしたんだ――と聞くことも度々。実家にいる時はなるべくその恰好をするように心がけていた。
「ん? 今日もそのほうがいいのかな。でも、大事な話をしにいくんだし……」
ラフな娘ではなくて、今日はきちんと大人の自分で行くべきと小鳥は言い聞かせた。
季節が巡り、瀬戸内はまた初夏の気配。
昨年春、小鳥は無事に大学を卒業。調理師、栄養士などの資格を取得し、念願の真田珈琲にも就職することができた。
桜が咲いて、社会人二年目。小鳥はそのまま真田本店でバリスタとして勤めている。
だけれどまだまだひよっこ。でも、お客様に珈琲を出すことを、この春から許してもらえた。
次はフードコーディネイターと全国バリスタ検定の資格取得を目指している。