愛シテアゲル
「似合っているよ。俺がそう思って選んだんだから。でも似合いすぎる。おまえ、顔はまだあどけない小鳥なのに、身体はなんでこんな……」
またその先を言わない。優等生のお兄ちゃんはそういうことはたまに濁すけれど、ベッドの上では意地悪兄貴になって、他の人が想像できないだろう言葉で男になる。
「もう。わかったよ。他のものを着ていきます」
「いや、いいよ。ジャケットでちゃんと隠せよ」
あれ、割とあっさり引き下がったなと思ったら。
「夜、俺が楽しむから」
「わ。翔がいうとすごくえっち」
「そのつもりだよ」
変わらずのやり取りに、彼がやっと余裕の笑みを、八重歯をのぞかせて見せて部屋を出て行った。
着崩れたカシュクールのワンピースを、再び胸元で合わせて、とかれたリボンを結ぶ。
「まったくもう~。怒っているふりして、結局、私のことからかっているんじゃん」
本当は怒っていない。怒ったふりをして、小鳥がわたわたとまだまだ子供みたいに慌てるところを、大人の余裕で見て楽しんでいる。これは彼の悪い癖、意地悪な癖。
でもその中に密かに……。『他の男に気をつけろよ。俺がこうなるんだから、他の男もおまえの身体を見ているからな』と釘を刺しているのだともわかっていた。
「小鳥、行くぞ」
「はい、いま行きます」
就職して一年が経ち落ち着いてきたので、今日は翔と前から決めていたことを伝えに行く。
英児父に『結婚前提の同棲』を許してもらい、小鳥はいよいよ龍星轟の実家を出るつもり。
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