愛シテアゲル
聖児が大阪の自動車大学校に行ってしまったので、ふたりは遠距離恋愛だった。だけれど聖児の帰省には、二人はセブンに乗ってよく出かけていた。
そのうちに聖児の方から『スミレ先輩とつきあっている』と龍星轟に就職する前に報告。その時は琴子母よりも英児父が『スミレちゃんは大事な大事な野口さんの娘さんだからな』とくどくど説いていた。
「さあ、気合い入れていくか」
「よし、龍の父ちゃんに負けない」
こちらはこちらで集中しなくてはいけない大事な時。
スープラから、スーツ姿の翔とおめかしをした小鳥が降りてきたので、ピットにいた従業員の男達が外に出てきてしまう。
「翔、ついにか。いよいよだな」
「小鳥、負けるなよ」
兵藤のおじさんと清家のおじさんがガッツの拳を向けて、激励してくれる。
マコちゃんにノブ君も『頑張れ、兄貴。小鳥ちゃん』と応援してくれる。
事務所のドアを開けると、矢野じいと武智専務も、なにもかもわかった笑顔で出迎えてくれた。
そして社長デスクの英児父のところへ。
「おう、なんだ。おまえ達まで」
翔と小鳥の出で立ちを見た英児父が、やはり眉間にしわを寄せた。あのガンとばしの眼差しが翔に向けられる。
「聖児、ちょっと待てや。姉貴の話が先だ」
翔と小鳥がそこへ向かう前に、聖児とスミレが既に英児父の前に並んでいた。
この時、小鳥は妙な予感がした。