愛シテアゲル
ああ、もう駄目だ。これからずうっとお兄ちゃんに、大事な最初のエッチの想い出として、あの無様な股開きの転落姿を思い出されてしまうんだ! このまま小鳥は逃げ出したくなる。MR2に飛び乗って遠いところへすっ飛んでいきたい。
どうしていつも自分は女らしくないんだろう。いつもなにかしらやらかして、皆を驚かせてしまう。今夜も、大事な大事な時間だと覚悟して、いつものようにがざつにならないよう気をつけてきたつもりだったのにと、小鳥はしょんぼりと黙り込んでしまう。
「もしかして気にしているとか」
彼に顔をのぞかれ、小鳥はふいと彼の胸の中に隠してしまう。
「えっと。うん、びっくりしたし……。でも、俺がよく知っている小鳥のままで、ほっとした」
黒髪のつむじへと、翔が優しく頬ずりをしくれる温かみが伝わってきた。
「子供っぽいね、私」
「いまはまだ、それが小鳥だと思っている。それに俺はそんな小鳥といたいと思ったんだから」
ほんとうに? 言葉にならず、でも隠れていた胸元から、彼の顔を見上げた。
「それに、小鳥はまだ男の気持ちわかっていないなあ」
「男の、気持ち?」
一瞬、あのお兄ちゃんがちょっと意地悪に笑った様な気がした。いや、気じゃなかった。いたずらな笑みのまま、それまで優しく包んでくれていたシーツをばさりと大きくめくり、再び小鳥の裸体を晒した。
「ちょ、な、なにするの。お兄ちゃん」
慌ててはがされたシーツを手で追って引き戻した。でも、翔はそれを許してくれず、男の力で小鳥が握っているシーツを奪ってしまう。
仄かな灯りの中、ふんわりと浮かび上がる女の裸体。彼の目が熱っぽくそれを見つめてる眼差しに気がついて、小鳥も大人しくその視線を許しじっとした。
「ほら。女らしくなった。それで充分なんだよ」
慈しむ眼差しのまま、彼がそっと小鳥の胸元にキスをしてくれる。