愛シテアゲル

4.お兄ちゃんに限って、そんなこと。(1)



 じんわりと彼の肌の体温が、小鳥の身体のあちこちに残っている。

 その温かみを実感しながら、静かに衣服をまとう。

 背中合わせにして、翔も元の姿に戻っているのを振り返った肩越しに確かめた。
 

 まだまだ恥じる小鳥を知ってくれているのか、裸からの着替えを見ないように気遣ってくれている。彼はいつもそんな接し方がとても丁寧。ずっと昔からそう。何事にもお兄ちゃんは丁寧に接してくれ、乱暴にしない。

 それは上司の娘だからだと思っていたこともある。そして、いまのこれも……結局、最後は、上司の娘だから? 乱暴に貫けなかったのも、結局は?

 落ち着くと、ふいにそんなことが頭に過ぎった。

 タンクトップにデニムパンツ、最後にシャツを羽織っているところで、ふわっと慣れない匂いに包まれた。

 翔の肌の匂いか、髪の匂いか。よく知っている彼の匂いだった。それが今日は小鳥の傍にまとわりついている。小鳥はひとしれず、そっとその香りを抱きしめてしまう。

 身体が熱い。身体の奥がうずいたまま。あのまま貫かれても良かったのに。でも今夜はもう、小鳥がベッドから落ちてからはそのムードが壊れてしまった。

「ケーキ、食べるだろ」
「うん」

 翔がベッドルームから出て行った。
 初めての夜は、肌の触れあいだけで終わった。




 

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