愛シテアゲル
「おはよう」
毎朝のリビングに出ると、制服姿の弟ふたりは既に食事中。父の英児も食後の珈琲を片手に新聞を読んでいる。母の琴子も、眼鏡をかけた朝の姿でキッチンに立っている。いつもの朝。
小鳥も自分の席について、用意されている朝食を食べ始める。
「姉ちゃん、今日、誕生日だね。おめでとう」
いつまでも愛嬌たっぷり、みんなを和ませてくれる末っ子の玲児が一番に言ってくれた。
「ありがとう、玲児」
「今日から『成人』てヤツだね~」
玲児も高校生になった。姉弟同じ高校に入学した。小鳥が卒業して二年になるが、車屋滝田の三姉弟として、穏やかな性格の玲児でもひと目で知らない人に『滝田の……』と言われるらしい。
車好きは三姉弟変わらないのだが、どうしたことか、この末っ子。美術が得意! 元々、琴子母がそれに長けたところがあったとかで、その血筋じゃないかと言われている。なのに、この末っ子。近ごろは母親が勤めているデザイン会社に頻繁にお邪魔しているらしい。あの気難しいデザイナーである雅彦おじさんのところに出入りしているとか……。
弟たちは知っているのか、知らないのかわからない。だけど小鳥は既に『雅彦おじさんは、琴子母の元カレ』と知っていたから。まさかの末っ子が『デザイナー志望』でびっくりしていたりする。
そんなところ。父の英児はどう思っているのだろう、とか、たまに心配になってしまう。