愛シテアゲル
誕生日のケーキを食べる時には、もういつものお兄ちゃんと小鳥だった。
でも小鳥は嬉しかった。お兄ちゃんからケーキを切り分けてくれ、小皿に取ってくれて、紅茶までいれてくれた。
一緒にお祝いのケーキを食べながらの会話も、いつも夜遅くまでドライブをしているふたりのままだった。
――そうだった。いつのまにか、こうしてお兄ちゃんはとっても近い人になっていたんだ。この二年で、いつのまにか。
恋人と別れてしまってから二年。そして小鳥が免許を取ってから二年。お互いに『車が生活のど真ん中』にあるだけあって、小鳥が大学生になると夜は翔兄と過ごすことが多くなった。
二十歳まで、決して小鳥に手荒く踏み込んではこなかった翔兄。いつからなんだろう? 私のことを、『裸にしたいほど好きな女』だと思ってくるようになったのは?
そんな疑問がずうっとつきまとっていた。
「ご馳走様でした。じゃあね、翔兄」
もう門限もない。今夜の帰宅は日付が変わってしまった。お兄ちゃんが玄関で見送ってくれる。
「門限がなくなったとはいえ、たぶんオカミさんは、心配で待っているだろうな」
「きっとね……。うん、もう真っ直ぐ帰るよ」
「生意気な走りをして、目をつけられるなよ」
「もう、お兄ちゃんまで心配性だなあ。走って十分もしないところだよ。古い国道だしやんちゃなことしないよ」
小鳥自ら『やんちゃ』と言ったので、翔が笑い出してしまった。