愛シテアゲル


「じゃあ。心配性なお兄ちゃんの、心配性なお守りに『やんちゃな小鳥もいいけれど、さらに女の子らしくなりますように』と願をかけておこう」

 そう言って。彼が急に小鳥の手を握りしめた。小さな水色の箱に、銀色のリボン。何処かで見たことがある箱――。それを知って、小鳥は驚いて翔を見上げた。

 彼が照れたのか目を逸らした。

「後で開けて、ゆっくり眺めてくれたらいい。おやすみ」
「お、お兄ちゃん?」

 玄関まで見送ってくれたのに、まだ小鳥が玄関のドアを開けて出て行ったわけでもないのに、彼はそのままリビングのドアの向こうへと姿を消してしまった。

 え。こんなお兄ちゃん、ちょっと初めて? 小鳥は唖然としていた。
 

 お兄ちゃん、おやすみなさい。と一声かけてから玄関を出た。

 エレベーターを降りて、急いでMR2に乗り込んだ。

 運転席に座っても、エンジンもかけず、小鳥はその箱を急いで開けた。

 見なくてもわかる箱。でも信じられなくて。だって中身はそうとは限らない。この箱なら、ピアスかもしれないし、ネックレスかもしれないし、ブレスレットかもしれない。

 なのに期待している自分はやっぱり女の子だと思った。その箱を見て、女の子が一番期待するもの……。

 包みを助手席に放って、リボンも放って、白い箱が出てきて紙の蓋を開けて、最後にやっぱり出てきたビロードの箱!



< 51 / 382 >

この作品をシェア

pagetop