愛シテアゲル


「待って。落ち着いて。そんなわけないじゃない」

 車の中で一人、小鳥は馬鹿みたいに笑い飛ばした。

 ばっかみたい。私ったら、こんな時だけか弱い女の子の発想になっちゃって。馬鹿みたい。

 そんなこと、あるはずない。だって、まだ想いが通じて五日の、まだ二十歳になったばかりの子供みたいな女の――。

 きっと最近集めているピアスやネックレスだと思って蓋を開けた。

 ビロードの箱の真ん中に。夜明かりに光る銀色のリング――。

「う、嘘。嘘だあ」

 小鳥はMR2のハンドルに額を押し付けて脱力した。

「こんな私に、指輪……」

 逆に泣けてきた。
 もしかして。お兄ちゃんこそ、ものすごく力んでいたのかも?

 恋人に対してこれまでクールだっただろうお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが、歳が離れている女の子だからこそ、とっても気遣ってくれたり、『今度こそ、女の子の気持ちを無碍にしない』と意気込んで、買いに行ったこともないバースデーケーキとか、二十歳の誕生日だからと気合いを入れた大人っぽいプレゼントとか――。




 

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