愛シテアゲル


 このレストランは小鳥が子供の時からここにある。内装もオールドアメリカンで統一されていて、どこか懐かしい雰囲気で溢れている。

 この近くに、地元の人間が集まる海水浴場があり、その帰りに父と母がこのレストランに入って一家で食事をした想い出があった。

 とても雰囲気のある目につくレストランなので、平日は若い男女の出入りが多い。男性との待ち合わせとか、デートとかで入る若者も多い。

 そう、今日の小鳥のように……。

 赤いギンガムチェックのテーブルクロスがかけてあるテーブルで、ひとり、珈琲を飲んでいた男性が小鳥を見つけて微笑みかける。

「雨、大丈夫だったか」
「宮本先輩、早かったですね」

 浅黒く日に焼けた肌に、白い歯を見せ、溌剌とした笑顔を見せるその人の向かい席へと小鳥は向かう。
 向き合って座ると、スタッフがオーダーを取りに来る。

「紅茶と、……」

 メニューを眺める。なんといってもここのイチオシは『アメリカンタルト』。サイズも少し大きめ、ストロベリーにチェリー、パンプキン、そしてオレンジ、こちらもオールドスタイルのタルト。

「ストロベリーパイを一緒に」

 かしこまりました。と、スタッフが去っていく。



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