愛シテアゲル
「さーて、さっさと話を済ませよう。このあとバイトだろ」
挨拶代わりの冗談言い合いもそこそこに、二人はすぐに話し合いを始める。向かいの先輩もどっしりとした黒革のスケジュール帳をテーブルに広げる。ちゃらけて軽く見えるが、やるべき事はきちんとやりこなす几帳面さもあって、だから皆から頼られるリーダーでもある。
こちらの国大のレジャーサークルと、小鳥の女子大サークルとが提携して、まとまった人数で出かけて楽しむという流れになっている。
アウトドアサークル『ネイチャー』が大勢でわいわい出かけたい(女の子と!)という希望と、女子ばかりの女子大の『ドライブサークル』(通称、おでかけサークル+男子もいるよ)の希望が一致し、今年で提携三年目を迎える。様々なイベントをこの先輩と企画し、二校交流を含め、楽しんできた。
「小鳥ももう三年生か。そろそろ就活を意識する頃だな。小鳥と花梨も忙しくなってくるだろうな」
「先輩も就活大詰め、そして卒業準備ですね」
「そろそろスミレや後輩に運営を頼もうかと思うんだけど、そちらの『ナナコ』はどう考えているんだ」
『ナナコ』とは、小鳥と花梨が立ち上げた『ドライブサークル』のこと。小鳥の親友、花梨が名付け親。偶然だったが、MR2のナンバーの一部が『775』。それを見た花梨が、キャプテンの車のナンバー、そしてラッキーセブンの『7』を並べる女の子達という意味も含め『ナナコ(775)』と名付けた。
車屋と走り屋兄貴に親父達には『エンゼル』と呼ばれ、サークルの仲間内では『ナナコ』と呼ばれる車になってしまった。