愛シテアゲル


「花梨は地元に残るのか」

 先輩の問いに、小鳥も答える。

「花梨ちゃんは地元狙いでお目当ての企業もしぼっているんだけど、私は、まったくのんびりかな」

 宮本先輩が笑う。

「これまた小鳥らしいよな。『目指すところはひとつ、もうずっと前から決まっている。絶対にぶれない』だよな。だからいまのバイトをしているんだから」

 そう言いながら、先輩がいつになく優しい眼差しで小鳥を見て黙ってしまった。小鳥も訝りながら、何を思っているのだろうと首を傾げる。

「いいな。小鳥のその真っ直ぐなところ。誰もがそこに惹かれてしまう。俺も好きだよ。小鳥とサークルの提携をした時、そこがいいなと思ったのは本当だし」

 『好きだよ』。ストレートに言われても、小鳥は驚いたり照れたりはしない。この先輩とは既にお互いの何もかもをわかって『男と女にはならない』という結論を出している間柄。それでも『好きだ』と言ってくれるのは、恋などではない、それはもう既に『友情』だと小鳥は思っている。

 ――友情か。

 そう思う時、小鳥には宮本以外にもうひとりの男性が思い浮かぶ。
 高校の同級生、竜太を。
 今年は帰ってくるのかな。彼はいま、県外の大学にいる。



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