愛シテアゲル
「誕生日会、どうだったんだ」
「いつもどおりでしたよ」
でもふっと花梨と勝部先輩が親しげに二人きりで帰った様子を小鳥は思いだしてしまう。しかも、なんだか避けられてるかと思いたくなるほど、今日は一切、彼女の姿を見なかった。
「だろうなあ。また小鳥に仕切や面倒を任せて、自分たちは気ままにってやつだろ」
「そうでもなかったですよ。なんだか知らないけれど、昨日は日付を越えなかったし」
『へえ』と意外そうな顔をする宮本先輩。だが彼もふと眼差しを陰らせた。その手にはスマートフォンが。
「……花梨のやつ、最近、なにかあった?」
小鳥はドキリとした。昨夜、お兄ちゃんに払拭してもらった不安が蘇ってしまう。
「いえ。なにも」
そして、嘘をついてしまった。先輩に。
「それならいいんだけどなあ」
いつもの陽気さで先輩が笑い飛ばす。
だけれど、小鳥の心臓はドキドキしていた。目の前の、食えない先輩に悟られないよう素知らぬ顔をするのが精一杯。
この先輩こそ。花梨のハジメテの男性。そして花梨が恋している人。
先輩だって花梨を抱いたはずなのに。なのに二人は恋人同士ではない。