愛シテアゲル
リビングに入ると、彼のベッドルームが見えた。ドアが開いていて――。
まだ龍星轟のジャケットを羽織ったままの翔が、『赤ちゃん』を抱いている!?
だ、誰? お兄ちゃん。その子、なんなの?
しかも、部屋から女性が泣きさざめく呻き声まで聞こえてきた。
彼のベッドルームに当たり前のように入っていて。しかも、お兄ちゃんが大事に小さな赤ちゃんを抱っこしているだなんて――。異様な光景。
お兄ちゃん。なにかあったの? 私とこうなる前に、なにかあったの?
大人のお兄ちゃんが、夜のドライブをする以外、なにをしていても小鳥は知ることもできなかった。でも小鳥は自分の目で見えているお兄ちゃんが全てだと信じていた。龍星轟で丸一日めいっぱい働いて、その後は仲間と車で走る。女性との付き合いはなし。ただし、小鳥とは兄妹みたいにして一緒にいることはある。それ以外は――。
でもそれも、小鳥の勝手な思いこみ? ううん、お兄ちゃんに限って、そんなこと!
「もうイヤなのよ! ダメなのよ!!」
翔兄の思わぬ姿に驚いたのも束の間。そのベッドルームから女性が飛び出してきて、小鳥はさらに驚き足が動かなくなった。